ベトナムの製造業では、昨今、日系企業からベトナム人作業者の退職が相次いでいます。その主な要因として、韓国系や中国系企業が支給する給与水準が日系企業よりも高いことが挙げられます。いったいなぜ韓国や中国系の企業は、日系企業を上回る給与設定が可能なのでしょうか?今回は、その背景にあるいくつかの要因について探っていきます。
韓国/中国系企業はなぜ高給?
柔軟で迅速な賃金調整体制
韓国系や中国系企業は、現地の経済環境や労働市場の変動に対して迅速に対応できる柔軟な賃金制度を持っている傾向があります。
- マーケット志向の給与設定:現地の人材需要や競合企業の動向を踏まえ、必要に応じて賃金を引き上げることで、優秀な人材の獲得・定着を図っています。
- 短期的成果重視の経営戦略:成果に直結する報酬体系を採用しており、個々の生産性向上が即座に給与に反映されやすい環境が整っています。
一方、日系企業は伝統的な長期雇用や年功序列制度の影響を受けることが多く、急激な市場変動への対応が難しい場合があります。近隣他社と横並びレベルにする傾向がみられますね。
資本力と政府支援
韓国や中国の多くの企業は、母国政府や関連機関からの支援を背景に、積極的な海外展開を進めています。
- 政府の戦略的支援:特に中国は「一帯一路」構想や各種投資促進策を通じ、現地進出企業への支援を拡大。これにより、現地人材確保のための賃金引き上げも可能になっています。
- 大規模投資の余力:企業自体の資本力が強固であるため、労働市場での競争において、必要なコストを投資として捉える余裕があるのも大きな要因です。
これにより、現地労働者に対して高い報酬を提示し、即戦力の確保や技術力の向上を図る戦略が取られています。
経営戦略と企業文化の違い
各国の企業は、それぞれ独自の経営戦略や企業文化を持っています。
- 成果主義と競争意識:韓国・中国企業は、グローバル競争の激化を背景に、現地での競争力強化を重視し、短期間での成果を求める姿勢があります。
- リスクテイクと柔軟性:リスクを恐れず、必要に応じて人件費を投資することで、将来的な成長を目指す戦略が採られることが多いです。
これに対し、日系企業は歴史的に「安全第一」や「長期雇用」を重視する企業文化が根強く、給与体系の変更や柔軟な対応に時間がかかる傾向があります。
労働市場の現状
ベトナムは、製造業の発展とともに、高度な技能や即戦力を持つ労働者への需要が増加しています。
- 競争が激化する現地労働市場:限られた優秀な人材を巡って、各企業が熾烈な争奪戦を繰り広げています。
- スキルアップと報酬の直結:短期間でのスキル向上や生産性の向上が求められる中、韓国・中国企業はその期待に応えるために、成果に見合った高い報酬を提供する傾向が強いです。
これらの要因により、現地の労働者は、より高い給与と柔軟な評価制度を求めるようになり、結果として日系企業からの流出が加速していると言えます。
人手不足対策は?
給与・福利厚生の見直し
- 競争力のある給与設定
韓国系や中国系企業との競争に勝つため、業界水準以上の給与を設定することが求められます。市場調査を実施し、現地の労働者が求める条件に合わせた報酬体系を整備することが大切です。 - 充実した福利厚生
基本的な給与以外にも、健康保険、住宅手当、交通費の補助など、従業員が安心して働ける環境を提供することで、離職率の低下と優秀な人材の確保につながります。
働き方の柔軟性
- シフト制やフレックスタイムの導入
労働者の生活リズムや家庭環境に合わせた柔軟な勤務体系を導入することで、働きやすい環境を整えます。これにより、女性や高齢者など、多様な人材の活用が期待できます。 - リモートワークの可能性検討
製造業では難しい面もありますが、管理部門や設計、開発部門ではテレワークを積極的に取り入れることで、通勤負担の軽減や人材の地域的な制約を緩和できます。
自動化・デジタル化
- 生産ラインの自動化
最新の自動化技術やロボット導入を進めることで、人手に依存しない生産体制を構築し、人手不足の影響を軽減します。また、技術導入によって作業の精度や効率が向上するメリットも期待できます。 - デジタルトランスフォーメーションの推進
IoTやAI技術を活用し、生産管理や品質管理を自動化することで、従業員の負担を軽減し、より付加価値の高い業務に注力できる体制を整えます。
まとめ
韓国系や中国系企業が日系企業よりも高い給与を設定できる背景には、柔軟な賃金調整体制、強固な資本力と政府支援、そして各企業の経営戦略や企業文化の違いが大きく影響しています。ベトナムの製造業において、現地労働者の確保・定着を目指す上で、これらの要素をどのように取り入れていくかが、今後の日系企業の競争力向上にとって重要な鍵となるでしょう。
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